商標登録とは

第1章 商標権登録する意味とは

1章-1)商標登録するメリットは4つある!

商標申請数は年々増加しているのはご存知でしょうか?
2017年度は、2016年よりも申請数が2割程度、増加しているとのことです。
特に、中小企業・小規模事業者による申請が増加しています。商標に関する権利意識が、大企業のみならず、中小企業・小規模事業者に広がってきている傾向が現れていると言えます。

一方で、中小企業・小規模事業者には商標とはどんなものなのかについての認識が、外国に比べるとまだまだ浸透していないといえます。
「商標権を取得していないことで、警告状が届いた。」
「自分の店と間違えて近隣のライバルの店にお客様が行ってしまった。結果として自分のところにクレームが入った。」

という相談は実際に良くあります。

一方で、「重要なのはなんとなくわかるけど、費用をかけてまで申請する必要があるのか?」という中小企業・小規模事業者がまだまだ多いという現状があります。
商標登録するメリットは、4つあり、まずは、それぞれについて解説させて頂きます。

メリット1:名称を安心して使用できるようになります。

商標権を取得した名称については、商標権者のみが使用できるようになります。商標権者のみが使用できるということは、他にはこの名称を誰も使用できないということになります。

また、他人が同じ名称で商標権を取得することができないため、他社から侵害していると言われなくなります。
一方で、「自分が考えた名称を自分が先に使っているのだから、文句を言われる筋合いがない」と考える方もいらっしゃると感じることがあります。
そのようなことはなく、たとえ自分が先に名称を使用していたとしても、他人に先に商標権を取られてしまえば、後の祭りです。

例えば、私が、クライアント様の中には、先に商標を使っていたのに、しばらくしたら似た名称を使っている競合からいきなり警告状が届いたという事例があります。
サービスを開始したばかりだから油断できるというものでもありません。他の方は、開業した直後に、商標権侵害で訴えられ、その賠償額が1000万円だった、ということが実際にありました。このケースでは、1000万円という損害賠償の支払いができず、最終的には、会社を一旦畳むということになりました。

このように、他人の商標権を侵害してしまうと、名称の変更を余儀なくされるのはもちろんのこと、会社自体を廃業する(一端、潰さざるを得ない)という事態になりかねません。特に、近年は、インターネットの普及に伴い、Webページ上で商標権を侵害していることが発見されやすくなってきています。
攻撃は最大の防御というように、商標権を取得することは、経営上の一リスクを排除するために重要であり、予期しない損害賠償などの問題を避け、安定して事業を継続できるというメリットがあります。

1-2.他人の商標の使用をやめさせることができるようになります。

商標権を取得することで、自分の商標を他社が使用している場合、使用の中止を請求できるようになります。
自分の商品・サービスの認知度が向上してくると、商品名やサービス名が真似されるということがあります。また、認知度が向上しなくても、良いネーミングであるほど真似されやすいという性質があります。

商標権が侵害される場合のケースとして多いのは、自分の商標をインターネット上で使用されるということです。
昨今は、インターネットの普及に伴い、なんとなくネットサーフィンをしていたら、自分の商標が真似されていることに気づくことが増えています。
もし自分の商標が侵害されていることを見つけた場合、警告文をメールなどで相手に送付することで、インターネット上から自分の商標を含むWebページの削除を請求することができます。

1-3.SEOの効果

これまで説明してきたメリットは商標権を所有することによる、直接的なメリットになります。
他の副次的に発生するメリットとしては、意外と知られていないのですが、商標権を取得することで、権利化したワードについて、SEOの効果があるケースがあるということです。

なぜ、SEOの効果があるのかというと、商標権を取得することで、サイトの紹介文を検索ユーザーおよびロボットに伝えるMETAタグの削除も請求できます。
これによって、商標権を取得したワードで検索した場合に、自分以外のサイトがヒットしない状態を作ることができます。そして、自分の商標が記載された他者のWebページが存在しなくなるため、自分の商標などで検索した場合に、ご自身のページを最上位に表示させることが可能になります。
このように、商標権も活用のしやかたによっては、SEOの効果も得ることができます。

1-4.ブランディング効果

商標権を取得することで、しっかりとした企業活動をしているという印象を持ってもらえるため、取引先や顧客などの信用度が向上します。また、名刺などに®マーク(登録商標の意味です)をつけることができますので、商標権を取得していることを多くの方に認識してもらうことができます。

さらに、商標権を取得することで、他社の商標権を侵害していないことの裏付けにでき、他社とのアライアンスを組みやすくなるというメリットがあります。特に、販売のパートナーとして大企業とアライアンスを組むには、商標権の取得の有無が条件となることが少なくありません。
商標権を取得していない場合、販売している商品が急に販売できなくなったりなどのリスクがあります。
このようなリスクを特に、大企業は嫌う傾向になります。

そのほかには、アマゾンのブランド登録については、商標権の取得が前提条件となっています。アマゾンのブランド登録をすることで、自動削除機能により侵害の疑いがある商品などを自動で削除申請可能になります。これによって、模造品を排除可能になり、自社の市場と、ブランドイメージを守ることが可能になります。

また、製品の商標であれば、製品のパッケージに表示されることが多いです。自分の商標を使用している他社製品が存在した際に、これら製品を廃棄するように請求することが可能になりますので、自分の商標をつけた他社製品が市場に存在しない状態にでき、ブランドによる競争力を維持できます。

1章-2)商標権を取得しないことによって起こる4つのリスク

商標登録は、ブランド保護、取引先からの信用度の向上など、ビジネスに大きなメリットをもたらすものですが、一方で、もし登録しなかった場合のリスクもあります。
商標登録をするとなれば登録に際して手数料が発生してしまったり、登録が無事に完了した後でも管理と運用のために手間が生じてしまうものの、これかを考慮しても商標登録しない事によるデメリットの方が大きくなるケースもあります。

<リスク1:一般名称化するリスク>

その中でも自分が考案したオリジナリティが高い文言やフレーズなどが、一般的な名称に成り下がってしまうというリスクがあります。
過去にあった有名な事例では、胃腸薬で有名な大幸製薬の「正露丸」が一般名称化したということがありました。
これによって、「正露丸」の商標登録は、取り消されてしましました。
現在では、複数の会社からも「正露丸」という名前が使われる状況になっています。

正式に商標登録をしないという事は、せっかく築き上げたブランドが、まるでフリー素材のような様子になっていると言っても過言ではない状況といえます。
大幸製薬の「正露丸」については、その後、ラッパのマークと組み合わせた広報活動によって、現在のような形になっています。
一旦、一般名称化すると、このように他の内容(ラッパのマークなど)と組み合わせたブランディングを再度やりなおさなければならない事態にもなりかねないと言えます。
また、名称やパッケージが変われば中身が同じものでも、最初は手に取って頂けなくなってしまう可能性もあります。

こうした事例は決して珍しい事ではなく、既に世の中に存在していて人々が一般的に使用しているあらゆる物にも当てはめて考える事ができ、書類を纏める際など文具の中でも比較的使用頻度が高いホッチキスも例外ではありません。
なお、過去に一般名称化した商標としては、以下のようなものが挙げられます。

  • うどんすき
  • 巨砲
  • ホームシアター

商標権を取得することで、他人が商標を無断に使用することを中止させることができるようになります。
他人が商標を使用することを、中止させることで、上述したように一般名称化することを抑制できるようになります。

<リスク2:損害賠償や使用料を請求されるリスク>

既に高い認知度があっても先に登録されてしまうと、仮に老舗であっても、損害賠償請求がされるリスクがあります。
このような事態になってしまうと、先に使っていた側としては、不満を持たれたり、理不尽に感じられるかもしれません。
もしも、馴染みのある名称を継続して使い続けたいと考えている場合、相手に対し使用料を支払って使い続けさせてもらうということは可能です。
使用料については、相場としてはおおむね、売上の1.5%~3.5%ほどと言われています。

<リスク3:他人に自分の商標を真似されることによるリスク>

ある起業家の方ですが、事業を始め、内容が具体的になり、少しずつであるけれども仕事が進むようになってきました。
SNSなどを通じての認知度も高っていき、これで少しは落ち着くかなと肩の力を抜いたある日のことです。何となくインターネットでいつも通りに記事を検索していたら、ある業者のウェブページを発見します。そこには、自分が提供しているサービス名と全く同じ名称が使用されていました。
しかも、事業のコンセプトもそっくりです。
「ウチのサービス名が真似されている!」とその方は大変驚いたということがありました。

明らかに知名度が上がっていつつあるサービス名をそのまま横取りされていると思ったとき。
ほとんどの方は、

  • 許せない、少しでも早くサービス名の使用をやめて欲しい
  • 相手に先に商標申請されたらどうしよう・・
  • もし相手に商標権を取られたら、せっかく知名度が上がってきたのに、事業自体を撤退せざるを得ないのか
  • 訴えられたらどうしよう・・

と考えます。

特に、他人に先に商標申請をされ、その後、商標登録されてしまうと大変です。例え、先に商標を使用していても、逆に訴えられてしまうリスクがあるからです。
実際に、先に使っていたサービス名を他人に取られ、その後、警告状が送られてきたという事例があります。この件では、結果として長年使っていたサービス名を変更せざるを得なくなってしまいました。

上記以外にも、見込み客の方が、自分と間違えて他人のサービスを購入してしまった、
さらに、そのサービスの品質が悪く、自分の会社に苦情が来た などの実例があります。

他人に商標を真似されている場合、まず始めやるべきことは、この商標が自分以外から申請されていないことを調査することです。
仮に、誰も自分の商標を申請していない場合は、速やかに商標申請を行うことがとても重要です。
商標申請を行い、サービス名・商品名について商標登録を受けることで、以下のことが可能になります。

  • サービス名・商品名の使用の中止:例えば、Webページからサービス名の削除を要求できます。
  • 損害賠償請求:真似されるおとによって被った損害賠償を請求できます。
  • 信用回復の措置:新聞などのメディアへの謝罪を要求できます。

急いで商標を登録したい。権利化させたい。そんなときに「早期審査」という制度があります。通常の審査結果が商標申請から、9ヵ月ほどの時間がかかるのに対し、早期審査請求をすることで、審査機関を約3~4ヵ月に短縮できます。

<リスク4:自分が商標を使えなくなるリスク>

他人に商標権を取られてしまうと、その商標を使用できなくなるリスクがあります。
仮に、商品名やサービス名について先に商標を使っていても、後発の他人に商標を取られてしまうということもあります。
その場合、商標権者から、製品の廃棄や、損害賠償請求をされてしまうことも少なくありません。
また、せっかく市場で認知を得た名称を使えなくなってしまうというリスクがあります。
その場合、ブランディングを一からやり直しという事態になりかねません。

例えば、事業を始めてしばらくたったある日、A様に1通の郵便が届きました。
ハンコを押して受け取ったその手紙を開けてみると、表題には「警告状」と書いてありました。因みに、表題には「警告状」ではなく「通知書」と記載されていることもあります。

弊所も、「商標を侵害しているという書面が届いたけれど、どうしたらいいのか」というご相談を年に数回いただきます。
上記のケースでは、A様はとても困惑されている様子でした。いきなりそんな書面が来たら驚かれるのも当然かと思います。
警告状の内容としては、商品の廃棄とともに、今後の商標の使用の停止を要求するものでした。また、これまでに生じた損害の賠償を請求するというものでした。
そもそもこのような警告状は、どんな時に届くのでしょうか。

警告状の差出人は、商標権者か、その代理人(弁理士または弁護士)であることがほとんどです。
商標権者は、自分が登録した商標と同じ、または似ている名称(ロゴ)を他人が同じサービスや商品に使用していることを知って、「使用を止めさせたい」と思った時に警告状を作成し、送付します。
使用を止めさせたいと思う、ということは、
例えば、あなたがその商標を使用している事実が、業界内でメジャーになってきた場合に、警告状が来ることがあります。

こちらは、たとえば、雑誌などの媒体に取り上げられた・人のブログ内でよく紹介されているなどによって、あなたが商標を使用していることが、商標権者に知られた場合に、警告状が来ることがあります。
また、その商標でインターネット検索をすると、上位に表示される場合にも、警告状が来ることがあります。

いずれにしても、人の目に触れやすくなるのに比例して、警告状が来る可能性が高くなるということが言えます。
つまり、事業が軌道に乗ってきたタイミングで、警告状を受け取ってしまう可能性が高いのです。
別の理由として多いのが、あなたが提供している商品・サービスが、商標権者の商品・サービスと間違えられた場合に警告状が来るこということです。

以前、「白い恋人」の商標権を保有する石屋製菓が、「面白い恋人」を使用する吉本興業を訴えたという事件が話題になりました。一部の方の中には、「たかがパロディ商品で、笑いを取るためのものだから目くじらを立てることはない」と感じられる方もいらっしゃると思います。
しかし、最終的に訴訟にまでなったのは、「面白い恋人」を「白い恋人」と間違えて購入したという苦情が、商標権者である石屋製菓に寄せられたことが発端となっています。

このような苦情が寄せられると、商標権者側としては、自らが長年培ってきた、ブランドイメージが損なわれるのではないかという点を不安に感じます。そして、ブランドイメージを守るためにも警告状を出すという決断をするようになります。
警告状は普通、簡易書留や内容証明郵便といった直接受け取る形で届くことがほとんどです(最近は、電子内容証明を使う方もいます。)。
本文には、「あなたの使用している商標は、私の登録商標と同一だから使用を止めるように」といった内容と、侵害している登録商標と登録番号が記載されています。
このように、使用停止の要求だけが示されている警告状もありますが、以下の内容も求められることもあります。

  • 警告状に対する誠意のある回答(回答期限あり)
  • 商標がついた商品の全部廃棄、過去の写真等の全部削除(期限あり)
  • 廃棄や削除を行った証明書類の提出
  • 和解金の支払い

状況によっては、回答や削除期限が短く設定されてしまいます。
また、和解金が高額というケースもあります。

3)実際に起きたトラブルの実例 

<治療院の事例>

ある治療院Aですが、横浜と、東京都内にて2店舗で運営していました。こちらの治療院A、院長の腕が素晴らしく、口コミと紹介で新規顧客を次々と獲得している状況でした。

ある日、接骨院Aを紹介したところ、近くの似た名前の接骨院Bに間違えて行ってしまうということがありました。
別の日には、この治療院Aの紹介を受けた方から、東京の治療院Aに行ったものの、聞いていたのと全然違うサービスが提供されたという苦情が寄せられました。
治療院Aの院長は、おかしいなと感じていたものの、同じような苦情が何件か寄せられました。調べてみると、東京の店舗と同じエリアに、ほとんど同じ名前の治療院Bがあり、そこに間違えて紹介者が行っているとのことでした。
治療院Aの院長の方は、自分の方が先に治療院の名前を使っていたのに、名前を真似され、しかも顧客から苦情まで寄せられているという状況に怒りを覚えました。
なんとかして、紛らわしい名前の使用を中止させたいと考えた治療院Aの院長は商標権を取得することを決めました。
その後、弊所に商標申請をしたいとの問い合わせがあり、申請を行い、順調に商標権を取得できました。

商標権を取得した治療院Aの院長は、治療院Bに対し、商標権を侵害している旨の警告状を送付しました。接骨院Bは、名称変更を余儀なくされ、HPのデザインから店の看板までを全てを変更することになりました。同時に、接骨院Bがこれまで地元で築き上げてきたブランドイメージや、顧客からの認知度も失うことになってしまいました。
さらに、損害賠償請求もされており、商標の使用を差し止められた後には、HP、看板や、チラシなどを作り直す費用も発生することになります。
このような状況になってしまうと、事業の継続自体が危うくなってしまいます。

<台湾の代理店に勝手に商標申請された>

世界数か国でアパレル用品を販売するデザイナーの方がいました。当初は、日本でのみでしか販売していませんでしたが、現在では、世界10カ国以上で販売しています。
日本以外に製品を展開する場合、現地の販売代理店を通じて製品を販売することが多いという実情があります。この方も日本以外では、現地の代理店を通じて製品を販売していました。

ある日、代理店契約を交わしたばかりの、台湾の代理店が勝手に自分のブランドの商標申請をするということがありました。その代理店が商標申請をした目的ですが、代理店契約の内容を今後、有利にしたり、いざとなったら高値で商標権を売りつけるというものでした。このまま商標が登録になった場合、代理店に好きなように商標を使用されてしまうということにもなり兼ねません。また、仮に、品質が低い模造品に、自分の商標(ブランド名)をつけられて販売された場合、ブランド価値自体が下がってしまうということにもなりかねません。
その方は、急いで、台湾に商標を申請するとともに、台湾での代理店の申請を取り消すための準備を開始しました。

<語学学校の事例>

別の事例では、ある語学学校Aに対して、語学学校Bから警告状が送られてきました。
警告状には、「間違えて問い合わせが来る。名前が紛らわしいから、名称の変更を要求する」との記載がありました。
このケースでは語学学校Aは語学学校Bよりも先に、語学学校の名称を使用していました。しかし、語学学校Bが先に商標権を申請してしまったため、商標権者は語学学校Bとなってしましました。このように商標の世界は、早い者勝ちであるため、先に名称を使用していても、後発の業者から逆に警告状が送られてしまうということがあります。こちらのケースでは、結局は、語学学校Aは、名称を変更せざるを得ない事態となりました。

<アプリケーション開発会社の事例>

新しく設立したばかりのアプリケーション開発会社Aですが、自社で提供するアプリケーションの名前を考えました。
自分で考えたサービスの名前と、登記している会社の名前とが同一であり、また、非常に思い入れがある名前だったため、アプリケーション開発会社Aは、商標権を取得したいと弊所まで連絡がありました。
ところが実際に調べてみると、全く同じ名前について、広告会社Bがアプリケーションの分野で商標権を取得していることが分かりました。そのため、弊所としては、現状のままでは商標権の取得は、難しいとの回答をしました。
結局、アプリケーション開発会社Aは、サービスの名前を考え直すことになりました。社名そのものは、一旦登記してしまっていたため、変更することは容易ではなく、他社に商標権を取得された名称を、警告状が送られるリスクを伴いながら使い続けざるを得ない状況になってしましました。

 

<飲食店の事例>

中華料理店を営んでいるDさん、小さい店舗ながらも非常に繁盛しています。ある日、商標権を侵害している旨の警告状が、中華料理店を多店舗展開するV社から内容証明郵便にて届きました。
警告状には、グルメサイトで、自社の商標権を使用しており、商標権の侵害に該当する旨の記載がありました。また、使用を中止するとともに、損害賠償金を支払う旨の記載がありました。
V社の商標権は、「○○バル」という一般用語と思われるものでした。Dさん以外にも「○○バル」という表示をしている多数存在しています。Dさんとしては、一般的な用語を使っているだけで商標権の警告状を送られることに違和感を感じる一方で、看板などの表記を作り替えたり、損害賠償金を支払うことに抵抗を覚えました。

Dさんは、その後、弊所に相談に来られました。普段、冷静なDさんにしては珍しく、非常に焦っておられるようでした。このように警告状が来ると、ほとんどの方は、非常に不安を感じます。
このような事例の場合は、「○○バル」そのものは、誰もが使える一般用語であり、商標権の侵害には該当しないという回答をV社に対しては可能です。
また、Dさんのお店が実際に使っている商標について商標権を取得することで、「自分が商標権を持っている商標を使っているのだから商標権の侵害には該当しない」という回答も可能です。
二度と今回のような目にあいたくないと考えたDさんは、店舗の名称について商標権の取得を希望されているとのことでしたので、早急に商標権の申請をするとともに、V社に対する回答を行うという処置を取ることになりました。

<アクセサリーショップの事例>

埼玉県でアクセサリーショップを運営するTさん、大手のアクセサリーショップのX社から、商標権を侵害している旨の警告状がメールで届きました。
警告状には、「Tさんが販売するアクセサリーと、X社が販売するアクセサリーとが実際に顧客から取り間違いが起こっており、非常に迷惑をしている。Tさんが作ったアクセサリーをすべて廃棄するとともに、損害賠償金の支払いを求める」との記載がありました。
警告状からもX社の代表者の怒りが伝わってきました。
Tさんが使用している商標と、X社の商標とは全く同じものであり、商標権の侵害は免れない状況でした。
Tさんは、X社からの言われるがままに、名称を変更してアクセサリーを販売することになりました。
損害賠償金については、Tさんの売上自体がX社の事業規模に比べると、かなり小さかったこともあり、減額をするということになりました。
その後、Tさんは、変更後のブランド名について商標権を取得し、現在は、商標権を取得したブランド名を使って、アクセサリーの販売を行っています。

<コンサルタントの事例>

商工会議所で、営業のセミナーをすることになったコンサルタントのUさん「○○営業法」というタイトルのセミナーを開催することになりました。
HP上で、セミナーの募集を開始してから数週間後にUさんのところに、別のコンサルタントから、商標権を侵害している旨の警告状がメールで届きました。
警告状には、「○○営業法は自分の登録商標であり、とても思い入れがある。使用を中止してくれれば、商標権を侵害したことは水に流し、不問にします。1週間以内にHP上で使用されていない状態にしてください。」と記載がありました。
Uさん自体は悪気はなかったため、非常に驚いたものの、警告状に書かれている内容に従い、HP上の○○営業法という言葉を消去しました。

<化粧品メーカーの事例>

C社は半年前に立ち上がった化粧品メーカーです。
開業以来、販売している化粧品の販売が好調で、売上も右肩上がりでした。
特に、化粧品の分野では、商標権に関するトラブルが多いことを知っていたC社の代表は、化粧品のブランド名について商標申請を済ませていました。
商標申請をしてから8カ月後、C社のところに、特許庁から申請していた商標については、登録をすることができない旨の通知がありました。
詳細を確認すると、なんと、似たブランド名について、競合のE社に先に申請されており、そのことが理由で登録を受けられないとのことでした。

その後、追い打ちをかけるように、商標権を登録したE社から、商標権を侵害している旨の警告状が届くという事態になりました。
このままC社が、化粧品のブランドについて商標を使用できないということは、せっかく販売が好調な化粧品の今後の売れ行きに大きく影響してしまいます。
このように、商品・サービスの人気が出れば出るほど、この名前を使えなくなった場合の企業のダメージは大きくなってしまいます。

2章:商標登録するための基礎知識

2章-1)商標の種類は11つある

商標ですが、単に文字だけではなく、様々な種類のものがあり、例えば、くまもんや、はたまた改正法で「ファイトー一発!」の音声まで登録の対象となるようになりました。

商標には、誰が提供している商品・サービスなど識別するための役割があります。そして、商品やサービスを選択するための目印として機能します。
例えば、以下は売り場に陳列されている商品の画像ですが、消費者は、商品のパッケージや、商標(商品名)を目印にして自分が欲しい商品を購入します。

非常にざっくりとした説明ですが、このような役割があるものであれば、商標の権利として認められる可能性があります。
そのため、商標ですが、単に文字だけではなく、様々な種類のものがあり、例えば、ロゴや、図形のようなものも登録の対象となります。

皆様おなじみの以下の商品については、どの内容について、商標が取得されているかはお分かりでしょうか。全部で3か所あります。

今回の例では、「熱さまシート」のロゴと、子供のキャラクター(通称、熱さま坊や)について登録されています。また、当然ながら、小林製薬の社名についても商標登録されています。

このように、文字だけではなく、様々な対象が、商標登録の対象となりえます。

商標権として、登録可能な商標の種類については、具体的には、
1.文字商標、2.記号商標、3.図形商標、4.文字と図形の組み合わせ、5.文字と記号の組み合わせ、6.立体商標、7.音の商標、8.動きの商標、9.ホログラムの商標、10.色彩のみからなる商標、11.位置商標などがあります。

それぞれの具体例は以下になります。

商標ですが、単に文字だけではなく、様々な種類のものがあり、例えば、ロゴや、図形のようなものも含まれます。商標権として、登録可能な商標の種類について、解説させて頂きます。

1.文字商標

まずは、文字の商標が挙げられます。こちらは、アルファベット・平仮名・片仮名・数字などの文字のみから構成されています。

【登録番号】 第618689号

2.記号商標

次に、記号の商標があります。記号とは、「〇」や「△」などの意味を持った図形やこれらを組み合わせたものを指します。モノグラムや、暖簾記号などが該当し、例えば、下記のように「〇」と「△」とを組み合わせた武田製薬の商標が有名です。

【登録番号】 第54111号

3.図形商標

図形商標は、デザイン化されたものが該当します。キャラクターなども該当します。くまモンの商標などが有名です。他のキャラクターとしては、バーチャルアイドルのキャラクターや、プロスポーツチームのマスコットキャラクターなど分野で取得されることが多いです。くまモンの例のように、ブランド戦略の一環としてご当地キャラで取得されることも多いです。

余談ですが、通常、商標を他人が使用したい場合には、使用料が発生しますが、くまモンに関しては、熊本県のPRに繋がる使用であれば使用料が無料となっています。そして、あえて無料で使用させることで、熊本県の認知度アップにつなげています。

【登録番号】 第5540074号

4.文字と図形の組み合わせ

上述した文字と、図形については、それぞれ単独でなければ権利化が認められないわけではありません。例えば、以下の例のように「Asahi」や「SUPER DRY」の文字と、図形とを組み合わせたものも登録の対象となります。

【登録番号】 第2240846号

5.文字と記号の組み合わせ

こちらも同様に文字と、記号について、それぞれ単独でなければ権利化できないわけではありません。文字と記号との有名な例としては、下記のNIKEのマークがあります。

【登録番号】 第1517133号

6.立体商標

立体的な物体(三次元の物体の形状)であっても商標登録の対象になります。例えば、ペコちゃん人形については、立体商標として登録されています。

【登録番号】 第4157614号

また、以下の例のように、コカ・コーラの瓶の形状も、立体商標として登録されています。どんな瓶の形状であっても、商標登録が認められるわけではありません。あくまで、コカ・コーラの瓶のように、その瓶を見ただけで、ザ コカ・コーラ カンパニーの商品であることが、ユーザに想起される場合に、登録が認められます。

【登録番号】 第5225619号

7.音の商標

音の商標については、昔は商標の対象外でしたが、平成27年の4月から登録の対象として認められるようになりました。音の商標であっても、商品・サービスの提供者を想起できるケースもあるからです。また、企業のブランド戦略上、重要な役割を果たすケースも増加してきていると言えます。

8.動きの商標

文字や図形が時間の経過とともに変化する商標も、平成27年の4月から登録の対象となりました。例えば、レンタルしたDVDなどで最初に流れる、下記の動画などが登録になっています。
動きの商標についても、それ自体に、ブランド価値があり、動き全体から生じる、企業イメージなどを守りたい場合に有効です。

9.ホログラムの商標

文字や図形等がホログラフィーよって、見る角度によって変化する商標も商標登録の対象となっています。

10.色彩のみからなる商標

単色または、複数の色彩の組み合わせのみからなる商標についても対象となります。これらは、あくまで色彩のみからなり、図形や文字などを含むものは、こちらには該当しません。下記の例のように、色彩を組み合わせただけのものであっても、商品の提供者がイメージできるケースがあるため、そのブランド価値を守るために、平成27年の4月から新たに商標登録の対象として追加されました。

11.位置商標

文字や図形等の標章を商品等に付す位置が特定される商標も登録の対象となっています。以下の例は、IBM社のキーボードになります。中央付近に赤い色のボタンがあるキーボードについては、IBM社の製品を想起するため、位置商標として米国で登録になっています。

今回は、様々な種類の商標について、ご紹介させて頂きました。企業のブランドを識別するための要素は多種多様です。
商標は、本質としては、企業に蓄積されたブランド価値を守るためのものであり、その目的と達成するために、様々な種類の商標に対する登録が認められています。
ブランド戦略とともに、これらの取得についても、一度、ご検討頂ければ幸いです。

2章-2)他人の登録商標と似ていると商標登録できない?

商標申請すると、一般的におよそ30~40%程度の割合で、拒絶理由通知が来ることがあるといわれています。
拒絶理由は色々なものがありますが、その理由の一つに、「登録済みの商標と同一又は類似だから」というものがあります。

この章では、どういう場合にこのような拒絶理由が通知されるのかについて、説明いたします。
また、こんな理由で拒絶理由通知が来た場合、登録にもっていく方法はあるのか?について、お話します。

<「登録済みの商標と同一又は類似だから、商標登録できない」という拒絶理由の詳細>

他人が登録している商標は、権利を取得できません。
ですが、これは同一又は類似の商標を、「商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用」している場合です。
つまり、「原田国際特許café(架空のお店です)」という名称が、<飲食物の提供(第43類)>で既に登録されていたとします。
その場合、「原田国際特許café」という名称を<飲食物の提供(第43類)>で申請をした場合、登録済みの商標と同一又は類似だから、商標登録できない」ということになり、拒絶されてしまいます。
これは、「原田国際特許café」という申請する名称と、既に登録になっている「原田国際特許café」という名称とが一致するからです。
また、申請している役務<飲食物の提供(第43類)>と、既に登録になっている「原田国際特許café」の役務<飲食物の提供(第43類)>とが一致するからです。

一方、<セミナーの企画・運営又は開催(第41類)>で出願すれば、何の問題もなく登録されることになります。
これは、申請する名称が「原田国際特許café」で一致するものの、指定役務(その名称を使用するサービスのこと)が、<セミナーの企画・運営又は開催(第41類)>と<飲食物の提供(第43類)>とで異なるからです。

<拒絶理由通知を解消して、登録査定を得る方法>

では、上述した拒絶されるケースのように、名称も指定商品・役務も似ていたら、どうでしょうか。
ご想像のとおり、拒絶理由通知が特許庁から届く可能性は非常に高いといえます。

ですが、その名称が以下の種類であれば、理由を解消して、登録にもっていける可能性があります。
それは、名称自体の「識別力がないか、またはその識別力は極めて低いもの」であること、さらに、その「識別力がないか、またはその識別力は極めて低い」名称に、「図案化されている(デザインが加えられている)」こと、です。
識別力がない、というのはイメージがしづらいかもしれません。
例えば、「ハンドマッサージ」という名称に、図案が組み合わさっているケースがあります。

「ハンドマッサージ」自体は、「手(ハンド)をマッサージする」または「手(ハンド)でマッサージする」程のいう意味あいで、一般に使用されている実情があります。
こういった言葉には識別力がないといえます。
このように、商標の構成の一部である「ハンドマッサージ」という名称自体に、「識別力がないか、またはその識別力は極めて低いもの」である場合、その識別力がない部分は、商標の構成から無視されて判断されます。

その場合、残った「図案化された部分」について、同一又は類似であるか、の判断が行われます。
つまり、言葉自体が共通していても、その言葉自体の識別力がなければ、類似しているかどうか判断するには、図案化された部分になるため、図面によるデザインの相違を主張することで、登録済みの商標と非類似だ、と反論することができます。
こういった反論を記載した意見書を提出すれば、登録査定を得る道も開ける可能性があるのです。
もちろん、使用されている名称、図案の程度により、その可能性の高低は変わってきます。登録可能性がどれくらいあるのか、個々の事案に関する判断については、ケースバイケースであるため、一般の方では判断が難しい場合がほとんどです。そういった場合については、専門家にご相談した方がよいケースが多いということになります。

<そもそも拒絶理由通知を受け取らないために>

拒絶理由通知が来ると、通知に記載されている「登録をすることができない理由」を解消するために、上述したように意見書を作成して提出して反論する必要があります。
これには時間も手間もかかりますし、特許事務所に依頼している場合には、追加料金も発生します。なお、反論をしない場合には、拒絶が確定してしまい、商標権を取得できないということになります。
その場合には、実費を含む、申請に必要な数万円もの費用が無駄になります。
また、仮に意見書を提出して反論したにも関わらず、拒絶になった場合には、さらに反論費用も無駄になってしまいます。

そのような事態にならないために、まずは、拒絶理由通知を受け取らないために、事前の調査をしっかり行うことが非常に重要になります。
また、特許事務所に依頼する場合にも、しっかりとした調査結果を得ることが重要であるため、きちんとした調査報告書を提出してくれる事務所を選ぶことが大切になります。

2章-3)一般的な名称は商標を取れない?

一般的な名称については、商標を取得できません。一般的な名称と言われてもピンと来ない方がほとんどかと思いますので、実例を交えて説明したいと思います。

<商品・役務の普通名称>

まず、商品の普通名称は商標登録を受けることができません。所品の普通名称とは、例えば、商標登録を受けたい指定商品が「りんご」である場合に、商標「りんご」や「apple」である場合に該当します。
また、普通名称としては「アルミ」や「パソコン」などの略称も商品の普通名称に該当します。
さらに、普通名称を、「ringo」や、「リンゴ」のようにローマ字や仮名文字で表示したものも普通名称に該当します。
このような普通名称に商標登録を認めた場合、商標権者以外が商品「りんご」にりんごと表示して販売できなくなってしまいます。

あくまでも商標登録を受けたい商品との関係で、普通名称に該当するかが決まります。そのため、指定商品が「パソコン」である場合に、商標が「apple」であっても普通名称には該当せず、登録になる可能性があります。

<商品・役務の内容を記述した商標>

商品の、品質や、販売地や、効能や、形状や、原材料などを説明した商標は登録になりません。

商品の販売地を表した場合の例としては、例えば、埼玉チーズケーキなどが該当します。記述的な商標として拒絶されることは非常に多く、例えば、商標「教育活動家」なども、「教育に対して熱心な人」との意味合いを生じさせるとして拒絶されてしまいます。

また、過去には、「コーチング面接」というものが、「コーチングを伴う面接の意味合いを生じさせる」として拒絶されたということもありました。
一般名称化否かの判断は非常に難しい場合もあります。例えば、「業務スーパー」は商標として登録されていますが、「業務レンタカー」は、業務として、長期に貸し出されるレンタカーを意味するということを理由に拒絶されたという事例があります。

また、M&Aの窓口や、事業承継の窓口は登録商標であるものの、融資の窓口や、相続の窓口については、一般名称であることを理由に拒絶されてしまったという事例があります。
一般名称に該当するかどうかは、どれだけ多くの人が、その名称を、なんらかの特定の意味合いをもたらす用語として使っているかに基づいて判断されます。上記の事例では、融資の窓口や、相続の窓口については、インターネット上でも、これらが「融資の相談の窓口」や「相続の相談窓口」を意味する意味合いで多数、使用されていたため、登録にはなりませんでした。

なお、一般名称であっても、文字の一部の表記を変更することで、登録になることがあります。例えば、商品ケーキを対象に商標「きび糖」で申請した場合、きび糖が、ケーキの原材料であることを理由に拒絶されてしまします。しかし、「糖」の部分を「党」に変更し、「きび党」とすることで登録になったという例もあります。
また、一見すると、一般名称とも取れそうな場合であっても、その用語から複数の意味合いが導かれる場合には、商標登録になるケースもあります。

例えば、「展示会営業」という商標は、「展示会方式の営業との意味合いを生じさせる」ことを理由に、一度は拒絶されています。しかし、その後、展示会営業という言葉は、「展示会方式の営業(展示会で商品・サービスを売る)」以外にも、「展示会というイベントそのものを売る」という意味合いも生じるということを特許庁に説明をし、最終的に登録になったという事例もあります。
また、「無印良品」などように、商品・サービスの内容を直接的ではなく、暗示的に表現をするような場合も、一般名称には該当せず、商標登録を受けられます。

2章ー4)商標登録前に選ばなければならない商標の「区分」とは?

商標には、区分という概念があります。
区分とは、特許庁における課金の単位であるとともに、権利範囲を決める上で大きな影響を与えるものです。
必要な区分が漏れると、その区分について、他人に権利を取得されるなどのリスクが発生します。
そのため、商標登録をする上では、非常に重要な概念になります。
また、申請前に、必ず適切な区分を決めなければなりません。
例えば、アパレル関連だけでも候補となる区分が8つもあります。

商標の「区分」と言われても、ピンと来ない方がほとんどだと思います。
「区分」とは、商標を使用する対象を分類したものです。区分とは、商標を使用する業務内容を、分類したもので、数字2ケタからなります。

こちらは、
区分は、第1類~第45類までの区分に別れているのですが、商標登録出願を行う際に、その中から自分の業務内容が含まれる区分を選択します。
第1類~第34類までが商品(手で触れるもの)についてのものになります。
また、第35類~第45類までが役務(目に見えないサービス)についてのものになります。
選択できる区分は一つだけではなく、必要に応じて、いくつもの区分を登録することが可能です。
例えば、ITシステム会社であれば、第9類(プログラム、アプリ)と、第42類(プログラムの提供(Saasなど))を選択することが多いです。
また、コンサルや、市場調査、広告配信も行っている会社であれば、第35類を指定することケースもあります。
また、飲食店の場合、第42類(飲食物の提供)は必須になります。
また、飲食店であっても、店で飲食物を提供する以外にも、弁当を販売したり、食べ物をテイクアウトされる場合もあるので、第30類(食料品)の分野を指定するケースもあります。

創業したばかりの方や、事業主を対象に、売上UPなどのノウハウを教える塾を運営している方がいますが、その場合は、第41類(知識の教授、セミナーの開催)は必須になります。また、これらの方々は、コンサルティングも行っているため、第35類(売上UPのコンサルティング)も入れておくことが重要になります。
同じ区分の中であれば、複数の商品・サービスを指定することができます。売上UPのノウハウを教える塾の場合、将来的には、塾長の体一つでは足りなくなってしまい、FC化をしたり、協会ビジネス化をすることが多くなります。
そのような場合まで想定して、第41類に、資格試験の実施、資格の認定などのサービスを指定しておくことが重要になります。また、このような知識を売るサービスの場合、インターネットで動画を配信して課金をするということもあるため、その内容「動画を介した、情報の提供」についても第41類で指定することが重要になります。
このように、商標を申請する際には、同じ第41類の中で、サービスとして現在または将来、提供する可能性のあるものを全て、網羅して指定するということが肝要になってきます。

区分を指定すればするほど、権利として取得可能な分類は増加します。
但し、区分を登録すればするほど、その分費用はかかることになるので注意が必要です。そのため、区分を登録する際には費用をよく考えて選ぶ必要があります。
例えば、区分を一つ追加するごとに、申請時に追加で8600円の特許印紙代(実費)が発生致します。
また、登録時には、初回の権利維持期間が5年の場合には16400円追加で発生し、権利維持期間が10年の場合には28200円が追加で発生します。
何も考えずに多くの区分に登録してしまうとそれだけ出費も大きくなります。
特に、権利維持に必要なランニングコストが大きくなってしまいます。
また、自分の行っている業務内容と関連のないものを登録しても意味はありません。
自分の業務内容や業態に合わせた物をきちんと登録する事により効果を発揮することが出来ると言えます。
また、予算に余裕がない場合には、最も重要(例えば、売上が大きい)なものを優先して申請することが重要になります。

例えば、アパレル用品を販売している方であれば衣類品の25類だけではなく、衣類以外にも扱い場ある場合には他の区分にも登録する必要があるので注意が必要です。
具体的には、下記の区分が候補になります。

【第9類】 【指定商品(指定役務)】眼鏡,サングラス
【第14類】 【指定商品(指定役務)】貴金属,キーホルダー,身飾品,時計
【第18類】 【指定商品(指定役務)】かばん類,袋物,財布,カード入れ,傘,つえ,ステッキ
【第24類】 【指定商品(指定役務)】タオル,ハンカチ,その他の布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製のティッシュケース用カバー,布製ティッシュペーパーカバー
【第26類】 【指定商品(指定役務)】腕止め,衣服用ハックル,衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),頭飾品,リボン,被服用アクセサリー
【第35類】 【指定商品(指定役務)】 被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
【第40類】 【指定商品(指定役務)】布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。),織物の仕上げ加工,裁縫,被服の寸法直し,洋服の仕立て,受託による被服の装飾加工

上述したように、取扱をする商品のカテゴリーが多ければ多いほど、多くの区分を利用する必要がある為、費用も比例して大きくなります。
とても、すべてを指定することができないというケースもあるため、その場合は、優先順位付けが重要になります。

商品のカテゴリーが少なければ、1つの区分だけで良いので商売をする時にも費用を抑えることができるので安心です。
これらの内訳に関しての詳しい内容は特許庁のホームページや本でも確認することが出来ます。きちんと区分を選択しないと意味がありませんし、似たような物も多いので登録をする前には必ず目を通して置く必要があります。確認をせずに登録をしてしまうと無駄に費用を支払うことにもなりますので、必ず確認作業が必要です。
一人で確認作業をするとミスが出てくることもありますので、他の人にも確認をしてもらう二重チェックすると安心です。また、同業他社がどのような区分を指定して申請しているのかを、参考にするのも非常に有効です。

区分の広さは、権利範囲の広さになります
区分の広さとは、権利範囲の広さとも言いかえることが出来ます。
また権利範囲を広くするためには多くの区分に登録をする必要があり、それだけ費用の高さにも繋がります。
区分を広くすれば広くするほど、独占権を得ることは出来ますがその分大量の印紙代がかかってしまうので、区分を広くすることはメリットがあるだけではなく、費用が高くなるデメリットも考える必要があるので注意が必要です。

この為、権利範囲の広さを求めて、多くの区分に登録をするのではなく、自分の業務内容に合わせて必ず必要となる部分だけを先に登録することが大切になります。
上述したように、基本的に費用は登録する倍数で増えていくことになりますので、商標登録をする時にはどれだけの費用がかかるのかチェックしておくと安心です。
費用を先に確認しておくと余分な区分を抑える心配も無くなります。

どれほどの費用がかかるのかわからない状態で登録する手続きをすると予想以上に費用が掛かってしまうため注意が必要です。
確かに区分を登録すればするほど、権利範囲も広くなるので、様々な事に利用することが出来ます。
その広さが自分の行っている業務内容にあっている物であれば問題はありませんが、まだその業務を行うかどうかわからない区分に関しても登録を行うことはデメリットにも繋がりますので注意が必要です。

実際に既に業務内容として行っている物だけを登録しておくと実務にあった物になりますので、余計な費用を払うこともなくなります。
まだこの先どうなるかわからない分野の区分を登録しておいても余計な費用を支払うだけになってしまい、出費だけで多くなるため、おすすめすることは出来ません。
必ず自分の行っている事業にそった物を登録するということが重要になります。
また、できれば、自らの事業の将来性まで考慮した上で、できるだけ漏れのない範囲で申請をするということが重要になります。

第3章 商標申請の流れとスケジュール

第3章―1)商標申請から登録までのスケジュールと発生する費用

自社で商品を開発し市場に販売する場合は、製品の特性や外見などに合わせた名称をつけて発表されています。自社の独自の商品を保護しつつ、ブランディングしたい。そんな時にも活用できるのが商標登録です。

一方で、商標を申請すればすぐに登録になるわけではありません。
また、申請からどのような手続きを経て登録まで至るのか、いつ、どのぐらい費用が発生するのか、複雑で分かりにくいという声をよく聞きます。
因みに、商標を申請してから登録になるまでは、2016年は6カ月程度でしたが、2017年は7~8カ月程度、2018年は8~9カ月程度もの期間がかかります。
ここ数年は、年々、申請してから登録になるまでの期間が延びていることにお気づきの方もいらっしゃるかと思います。このように期間が延びている理由は、特許庁の審査官の数は一定なのに対し、ここ数年は、商標の申請数が激増しており、特許庁側にて審査の処理に時間がかかっていることが要因として挙げられます。

今回は、商標登録の流れについて、発生する費用を交えながらお話します。

商標登録の流れですが、以下になります。
まず、商標申請の手続きを行います。商標申請の手続きは、申請の書類を特許庁に提出することで行います。提出の際には、出願時の印紙代の納付することになります。
出願時の印紙代としては、3400円+8600円×区分数を特許庁に納付しなければなりません。
こちらの印紙代ですが、区分数とともに増加します。
例えば、1区分での申請の場合、12000円となりますが、2区分で申請する場合は、20600円が発生します。こちらの費用は、特許事務所に依頼した場合であっても、自分で商標申請の手続きをする場合のいずれのケースであっても発生します。

願書を提出したのち、まずは、特許庁にて、出願の書類(願書)に形式的な不備がないかのチェックがされます。形式的な不備がもしある場合には、修正が指示されます。
申請した書類に、出願人の名前の記載がなかったり、商標を取りたい商標の記載がないなどの修正しきれないような重大な不備がある場合には出願そのものが却下されます。

形式的な不備がない場合、申請した商標について、商標登録をしても問題がないかについての、実体的な審査が行われます。審査は、特許庁の審査官によって行われます。
特許庁の商標の審査官ですが、一般的には、国家公務員試験の2種に合格された方が担当しております。

審査の結果、商標登録をしても問題がないと、審査官が判断すると、登録査定というものがされます。これは、申請した商標が、審査に通ったことを意味します。

最後に、選択した権利の維持期間と対応する登録料を特許庁に納付することで、商標権が発生します。権利の維持期間としては、5年と10年とがあります。
なお、5年の維持期間を選択した場合には、16400円×区分数の登録料を特許庁に納付します。
また、10年の維持期間を選択した場合には、28200円×区分数の登録料を特許庁に納付することになります。
こちらの費用も、区分数に応じて増加します。あくまでも商標権の維持費用であり、実費としてどうしても発生する費用になります。

繰り返しになりますが、まとめると以下になります。
商標申請をするに際しては、商標登録の実費(特許庁への印紙代)として、下記の費用はかならず発生致します。

出願料3,400円+区分数×8,600円

登録料区分数×16,400円(5年) 区分数×28,200円(10年) 

仮に自分で手続きを行う場合ですと、上記費用に加えて、電子化手数料というものが発生します。
この費用は、紙で申請した申請書を、特許庁のデータベースで管理しやすくするために電子化するのに際して発生するものです。
電子化手数料は、手続き1件につき、1200円と、書面1枚ごとに700円となります。

仮に1枚の出願書類(願書)を特許庁に申請した場合には、1200円+700円の1900円が発生します。かりに複数の手続きを一度に提出する場合には、各手続(1件)ごとに電子化手数料が発生します。
電子化手数料については、振込用紙が郵送されてきます。30日以内に所定の金融機関に振込をしない場合には出願自体が却下されます。

第3章―2)商標申請から登録までの全体のスケジュール

商標申請時に最初にしなければならないことは、区分を選択することです。
ここで区分と、登録をする際に、商標の内容がどのカテゴリーに入るかを示すものになります。

例えば、第3類なら化粧品、第5類ならサプリメント、第35類ならコンサルティング、第41類ならセミナーや研修などのカテゴリーになります。そこでそのカテゴリーが広いほど、区分数が増えていきます。商標の内容がそこまで包括しているようでなければ基本的には1区分での申請となります。
例えば、化粧品と、サプリメントを販売する業者の場合、第3類の化粧品と、第5類のサプリメントとを指定した願書を作成します。
また、あるコンサルタントが、コンサルティングだけではなく、企業研修なども行う場合には、第35類のコンサルティングと、第41類の研修の区分を指定した願書を作成します。

  • 商標出願には事前の調査が大事
    商標は、自己と他人の商品・役務とを区別するために用いられるものであるため、いかに該当する商標は登録を受けることができません。(商標法第3条)

    特許庁資料より抜粋

    このように独自の商標を決めた上で、登録の可能性があるかを見極めることが大事になります。
    特許庁のデータベースを使用することが一般的な調査方法です。
    しかし、過去の審査例や特許庁データベースと信頼のおける調査機関のデータベースを併用し類似商標が過去に拒絶されていないかを徹底して検証することでより登録の確度を高めることができます。

  • 商標の審査待ち
    審査の中で、一般的に30~40%程度の割合いで拒絶理由通知が来ることがあるといわれます。

    他人の登録商標と似ていると商標登録できない?
    審査の結果、商標登録ができないと審査官が判断した場合、拒絶理由というものが通知されます。拒絶理由が届いたからといって登録が難しいというわけではありません。
    拒絶理由に対する「意見書」を提出することで、登録ができるケースもあります。
    拒絶理由というと、絶望的な響きがありますが、反論することで、解消する可能性があります。また、ほんの少し修正するだけで解消するというケースもあります。
    意見書ですが、これまでの実例を検証し、過去の判例や審査例などを参考にすることで登録できる可能性を高めることができます。
  • いよいよ商標登録
    審査は最初の申請から約9カ月ほどで登録査定を受けることができます。登録できるという通知が来たら、登録料を納付しいよいよ商標の登録になります。
    登録査定がされたのち、最初にすることは、権利の維持期間を5年または10年のいずれにするかを決めることです。ライフサイクルの短い商品の場合、5年が選択されることが多いです。一方で、長期にわたって使用し続ける場合には、10年が選択されることが多いです。

第3章―3)弁理士が申請をサポートする場合は時間短縮になるか

1日も早く申請したいというお声を、弊所で頂くことが多いです。商標申請は、早い者勝ちという性質がある以上、競合他社に先に申請をされたりしないか不安という気持ちは良くわかります。
また、目の前の業務や、経営、従業員の問題などに忙しい社長にとって、本業以外のことに時間を割けないという実情もあります。
結論から申しますと、商標申請を特許事務所に依頼をすることで、申請までの時間は飛躍的に早くなります。処理が速い事務所ですと、取りたい商標と、その商標を何に使うのかを伝えるだけで、即日で申請をしてくれるところもあります。

毎年、何百件と申請をしている特許事務所にとっては、過去に申請をした案件については情報が共有化されています。また、過去の蓄積で、とてつもない数の申請を行っているため、新規に受注をする案件については、はじめて担当をするケースであるということは、ほとんどありません。

そのため、例えば、セミナー講師や、教室であれば、「第41類の、知識の教授と、セミナーの開催と、研修の開催と、資格試験の実施と、・・・・を指定すれば良い」コンサルをさらに行っている場合は、「第35類の、マーケティング、コンサルティング・・・を指定すれば良い」弁理士登録・届出事項変更届という形である程度パターンも決まっているケースもあります。

出願の書類を作成してから申請するまでの流れも所内で構築されているため、処理もスムーズであるため、当然、社長が自ら出願書類を作成して申請するよりも効率は良いです。

このように1日でも早く申請をしたい場合や、忙しくて、自分で商標を申請する時間を割けない場合などの場合には、特許事務所を活用することが有効と言えます。
また、ほとんどの事務所では、商標申請前に商標を取得できるか否かの調査をしてくれます。
これによって、無駄な申請をするというリスクを軽減できます。申請をして、拒絶になってしまい、審査結果が出た9カ月に再度出し直しとなると、商標権を取得できる日がかなり先になってしまうというデメリットもあるため、申請前の調査はとても重要です。

また、これから使おうとしていた商標が、実は取られていて警告状を後々送られるというリスクを軽減できます。
また、申請をしてから通常は、審査が完了するまで8~9カ月の期間がかかるところ、早期審査請求という制度を使えば3カ月ほどで審査結果を得ることもできます。
こちらの審査請求は非常に便利なのですが、条件が厳しく、自分で手続きをするハードルが高いというデメリットがあります。
そのため、このような早期審査請求まで検討をしている場合には、まとめて特許事務所に依頼をしてしまったほうが良いというケースもあります。

<コスト面ついて>

大きなメリットとしては、自分で処理をするのに対し、圧倒的に自分が使わなければならない時間を減らせるということです。

知財相談窓口に相談にいく時間や、書類を作成する時間、特許庁に提出する時間については、初めての場合10時間~20時間ほど必要になるかと思います。
仮に、社長の時給が1万円とした場合、10万円~20万円ほどのこすとが発生してしまうことになります。

このような点も考慮した上で、自分で処理をするのから依頼をするのが良いのかを決定することが望ましいと考えます。